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障害ある高齢者のリフォーム  その5   設計ポリシー

2017年06月10日

設計のポリシー

 

少しでも体が動くうちはなるべく変わらない景色の住まいでありたいと思います。

 まずは安全に動きやすいように 水回りを中心に周囲のスペースを配置したワンルーム(スタジオタイプ)を採用しました。

 水回り以外の建具は無くなり、残った建具は全て使い易い引き戸にしました(車椅子での開閉もスムーズです)。

 

私は難病指定の「末梢神経障害」で 主に感覚神経のダメージが一番大きく、運動神経にも影響が出ています。

 まだ何とか歩行は可能ですが 深部感覚の障害で手足のバランスがとれ難く ふらつくのでじっと立っていることが出来ません。

 段差の上下はほぼ困難ですが 室内や平坦な床なら壁にちょっと手を添えるだけでほとんど心配なく歩けます。

 

病状の進行は不透明ですが 現状は可能な限り大げさな助けなく自力で、様々な将来を想定してそのため準備はしっかりしておくことです。

 それなら完成時の景色は普通の住まいとさほど変わらないはずです。

   玄関は座って靴が履けるベンチと立ち上がる際の縦手摺(さりげなく)を設け

   車椅子が入り回転、乗り換えが出来る広さを確保します。

   20cm近い段差の框は何ともし難く、今は縦手摺を掴んで上がれますが 将来は補助者前提の急こう配のスロープを取り付けます。

 廊下の幅は85cm、片面には手摺の役目もする本棚を設けました(現状ならこれに手を突けば十分安全です)。

   将来しっかりした手摺等を取り付けるため 壁下地は相応しいサイズの木で細かく組んであります。

 洗面台は車椅子で使えるカウンタータイプ、トイレは3枚引き戸で開口を広くし手前のスペースと一体化します。

   ユニットバスはベンチタイプの1600×1400、すこし小さめですが 私には壁や手摺が近くて安全なベストサイズです

   障害者用のものを含め、必ず事前に実際のものを確認する必要があります、何しろ浴室の事故が断然多いのです。

 キッチンは奥さんがこだわり考えたもので、ここだけは特別なことがありません。

 衣類は本当に必要なものだけにしますが、他スペースとのしわ寄せで十分な通路幅が取れません

 将来もし一人になったら部屋中あちこちに衣類が散乱しそうです ウ~ン。

 テーブル、椅子、ベッド等の家具は何度もショールームへ足を運びしっかり体験して決めました。

   高さを調整し、椅子は指で持てる超軽量の木製ですが 全く信じられない扱い安さで大成功です。 

   家具の選択は日常生活に本当に大事なことで、相談していただければぜひアドバイスをしたいです。

 

どこに居ても良い位置に壁や家具ががあり、それに少し手を添えるだけで移動が出来ます。

   普通に周りにあるいろいろなもので安全を手助けすることが可能です。

 

それぞれの障害に相応しいサポートが出来て、家族にも違和感なく毎日をより普通に楽しめ 将来の準備を怠ること無い

目指すは「安心で楽しい 普通を意識したリフォームです」。

 

坂本 悠

一級建築士設計事務所 株式会社 有理社

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